向こう岸

最近はもっぱら同人イベントの参加記録

「COMIC1☆4」でのトークショウを聞いた

COMIC1☆4でのトークショウを聞いた。
毎回、表現規制がテーマとなっているが、今回のテーマはやはり青少年健全育成条例改定について。

登壇者は以下の方々。

以下、トークショーの内容をメモから記載する。
口調は元発言と異なる。また、メモを取り切れていないところもあり、内容の解釈も異なっている可能性がある。
:の前は発言者を示す(敬称略)。

※最初に市川さんより挨拶と今回のトークショーの流れの説明があった。また、市川さんが全体の進行を務めた。進行のためだけの発言は省略する。


市川:
条例の件、知らない人はいますか?
(会場ほぼ挙手なし)
みなさん、ご存知のようですね。


杉野:
私たちは昨年9/30の山口さんのブログ記事でこの件に気づいた。青少年問題協議会の議事録が酷い、という記事。以前から予兆は感じていた。アメリカでも国法できないことを州法でやっていたり、国内でも条例でやっていたりする事例があったため。
条例改定の動きに対しては、11/19にNGO-AMIと共同で意見書を出したり、またその後にパブリックコメントを送った。
今年に入ってからは我々は児童ポルノ禁止法改定について国会で院内集会を開催した。
都議会では2/24に条例案が提出された。
それに対して我々は藤本由香里さんや山口さんと協力し、集会や都議会でのイベントを実施した。反対運動の結果、都議会では30年ぶりの継続審議となった。


山口:
非実在青少年」はこれまでの国法や地方条例にない新しい概念で、東京都青少年・治安対策本部が考案した概念。
この概念を適用することにより、漫画の中に未成年の性行為、または類似行為があれば成年マークをつけることになる(表示図書)。表示図書になると、普通の本屋で売りにくくなり、これまで読む事が出来た本が突然読めなくなる。
より問題なのは十八条の「まん延の防止」という記述。「まん延」とはそこら中にあることであり、もともと法律では病気などに対して使う言葉。つまり、そうした性的描写のある書籍の存在自体に対して否定的である。
悪書追放を都がバックアップすることになり、「市民」による表現狩りに繋がる。同人イベントに苦情がつけられた場合、会場が借りられなくなる。書店への影響も大きい。


坂田:
同人誌即売会連絡会からは3/10に意見書を出した。自分はその時海外にいたが、状況が逼迫しておりスタッフに動いてもらった。


杉野:
コンテンツ文化研究会民主党の総務委員会で意見を述べることになった。荷が重かったので藤本由香里さん、山口さんに助けを求めたら、すごい人たちが集まってしまった。折角なので記者会見も開いた。


市川:
この条例改定は漫画・出版・アニメ・ゲーム全般に影響がある、非常に大きな問題である。我々同人業界の人間だけではなく、いろいろな人と協力して行く必要がある。


杉野:
これから条例案がどうなるかは、これから決まる。廃案になるかは分からない。


市川:
都から質問回答集というものが出た。読んだ人はいるか?
(ちらほら手が挙がる)
この質問回答集には即売会についてや、アニメのシーンについても書いてあった。回答集に出ているような基準をどうやって決めるのかという疑問がある。


山口:
回答集には法的拘束力はない。裁判でも認められない。現在の都の担当者の考えでしかない。都知事が変わって担当者が変わったり、あるいは異動によって担当者が変われば判断も変わる。
この回答の内容を実施したいのなら、現在提出されている条文は必要ない。
法律家としての自分の見方は、最後は結局条文が決めるということ。説明をしている暇があるなら条文自体を変えるべきだが、いっこうに条文を変えようとしていない。恣意的に運用したいという意図を感じる。


坂田:
コミックマーケット等の同人誌即売会について、「個人の趣味」の範囲であるため対象ではないとは言っているが、気になる点がある。書店は対象となっており、したがって、同人書店卸を行っている同人誌は対象になる。また自主規制を当然としている。


杉野:
コミケが対象外というのには疑問を持っている。回答集が出る前に都の担当者に「フリーマッケット等の企業が主催ではないイベントでの事業者は誰か?」と聞いたところ、「コミケのことですよね」と念を押された上、「事業者は主催である」と答えた。このようにわざわざコミケのことを言っていた。


市川:
こういう回答集を出すところを見ると向こうも切羽詰まって来たということだろう。すぐに通ると思っていたようだ。なぜここまでしてやりたいのか、という疑問がある。


山口:
6/1に都議会が始まり、6/8に審議入り、6/15になんらかの結論が出ると思われる。


市川:
悪い方向に決まったら、コミケはどうなってしまうのか。原稿を描いたり、印刷する際にも影響が出る。
これから我々は何をやっていけばいいのか。いろいろ集会もやり、どうしたらいいか考えていかなければならない。都議会議員に手紙・メールを送ったり、パブリックコメントを出したりもした。まずはみんなの注目から始まる。ブログに書いたり、Twitterでつぶやいたりすることから。


山口:
条例についてのイベントで人が集まらないと、議員が「一部の人が騒いでいるだけだ」と思ってしまう。違う顔ぶれがたくさん集まるのが一番良い。
2003年の改訂時は自分の力不足もあり、ほとんど議員さんの繋がりが得られなかったが、今回は2桁近い議員さんが協力してくれる。


杉野:
元国会議員の保坂展人さん、また民主党共産党生活者ネットワークとは話をしている。自民党公明党はなかなか会ってくれない。アポイントメントを取っても駄目。
我々は表現の規制を大切にしてくれるなら右でも左でも良い。


市川:
表現の自由が我々にとっては一番大事。前代表の米沢さんも「まずは選挙に行こう」と言っていた。政党は関係ない。


杉野:
表現の自由、意見の自由がなければ我々は何も出来ない。保守も革新も関係ない。


市川:
今回は1991年(有害コミック騒動)以来の危機。当時も現在も、いろいろな人が声を挙げてくれた。


山口:
規制をしたい人は何度でもチャレンジできる。しかし我々は一度やられたら終わり。戦い続ける必要がある。しかし、規制問題にずっと関わってくると疲れてくる。みんなにも協力してほしい。コンテンツ文化研究会の人も身を削って頑張っている。


杉野:
今の自分の会社は理解があって活動できている。その他のメンバーもギリギリで頑張っている。小さな事からでも規制反対に協力してほしい。


坂田:
今回の問題は大きな問題だが、光もある。ペンクラブや十社会など、いろいろなところから反対が出ている。また、新潟の新聞から3回も反対の社説が出ている。都条例の問題は、都民だけの問題ではなく、日本全体の問題である。


最後に市川さんより締めの挨拶で終了。



以下、感想等を記載。
山口さんが最後の方で言っていたことについて。
おそらく表現規制の問題はこれからもずっと続くのだろう。現在、表現規制の話が出てくる場合、どの論点の規制推進論でも毎回中心にいるのは大抵同じ人たちだが、その人たちがいなくなったところで終わる訳ではない。そして実際、自分のように規制関連の情報を追っかけていたり規制反対団体にカンパしている程度の関わりでも、いろいろと疲れてモチベーションが下がることがある。長期的に継続して規制反対できるような体制をみんなで支えないと、これから先、やっていけないと思っている。